「主よ、私に貞潔を与えてください、しかし今ではなく」

アウグスティヌス(画像はイメージです)
アウグスティヌス(画像はイメージです)
  • 354年11月13日~430年8月28日(75歳没)
  • ローマ帝国(現アルジェリア)出身
  • 神学者、哲学者、キリスト教教父、ラテン教父

英文

”Oh Lord, give me chastity, but do not give it yet.”

日本語訳

「主よ、私に貞潔を与えてください、しかし今ではなく」

解説

この言葉はアウグスティヌスの『告白』第8巻に由来する有名な一節である。彼は若き日に享楽的な生活を送りながら、理性では節制や貞潔の必要性を理解していた。しかし同時に、欲望を断ち切る決断を先延ばしにし、清さを願いながらも欲望に留まりたいという矛盾した心情を抱えていた。その内的葛藤を率直に表したのがこの言葉である。

ここには、アウグスティヌスが説く「意志の二重性」が明確に表れている。人は善を求めつつも悪に惹かれ、理性と欲望の間で引き裂かれる存在である。この弱さを自覚することが、最終的に神の恩寵による回心に至る道を開いた。人間は自力では欲望に勝てず、恩寵を通じてのみ完全な清さに至れるという神学的理解が背景にある。

現代においても、この言葉は多くの人の共感を呼ぶ。禁欲や節制に限らず、喫煙・飲酒・浪費など「やめたい」と思いながら「まだやめたくない」と先延ばしにする心の動きは普遍的である。理想を理解しながら現実に抗えない弱さを認めることは、変化と成長の第一歩であるという点で、この告白は時代を超えて人間の本質を突いている。

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