「私の父は自分の姓を知らなかった。父の姓は祖父から受け継いだものであり、その祖父はさらにその祖父から受け継いだが、その姓は奴隷主から与えられたものだった」

- 1925年5月19日~1965年2月21日(39歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 黒人解放運動家、公民権活動家
英文
”My father didn’t know his last name. My father got his last name from his grandfather, and his grandfather got it from his grandfather who got it from the slavemaster.”
日本語訳
「私の父は自分の姓を知らなかった。父の姓は祖父から受け継いだものであり、その祖父はさらにその祖父から受け継いだが、その姓は奴隷主から与えられたものだった」
解説
この言葉は、マルコム・Xが奴隷制の遺産が黒人のアイデンティティに深い傷を残したことを示す証言である。アメリカに連れてこられた奴隷は元々のアフリカの名を奪われ、奴隷主の姓を強制的に与えられた。そのため黒人は自らの家系やルーツを正しく知ることができず、姓自体が抑圧の象徴となった。マルコム・Xが「X」を名乗ったのも、奪われた本来の姓の代わりに「未知の名」を示す記号としてであった。
背景には、奴隷制が終わった後も続いた制度的人種差別と文化的断絶がある。黒人は経済的・社会的に不利な状況に置かれるだけでなく、名前という基本的なアイデンティティの部分さえ奪われていた。マルコム・Xはこの問題を強調することで、黒人が歴史的にどれほど徹底的に支配されてきたかを明らかにした。
現代においても、この言葉はアイデンティティの重要性を考える上で大きな意味を持つ。自らのルーツや名前は、個人の尊厳や誇りと密接に結びついている。多くのアフリカ系アメリカ人が伝統的なアフリカの名前を取り戻そうとする動きや、文化的ルーツを再確認する活動はその延長線上にある。マルコム・Xの言葉は、名前に刻まれた歴史がいかに人間の尊厳と結びついているかを鋭く示している。
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