「金はまさに性のようなものだと分かった。持たなければそれ以外のことを考えられず、持っていれば他のことを考えるのだ」

- 1924年8月2日~1987年12月1日(63歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 作家、評論家、公民権運動家
英文
”Money, it turned out, was exactly like sex, you thought of nothing else if you didn’t have it and thought of other things if you did.”
日本語訳
「金はまさに性のようなものだと分かった。持たなければそれ以外のことを考えられず、持っていれば他のことを考えるのだ」
解説
この言葉は、人間の欲望と欠乏の心理を鋭く突いている。金も性も欠けているときには執拗に意識を支配するが、満たされてしまえば人は他の関心に目を向けるようになる。すなわち、これらは本質的に「欠乏」によって強く意識される欲望であるとボールドウィンは見抜いている。
この比喩は、彼の時代の社会的背景とも結びつく。アメリカの黒人社会では、経済的困窮と人間的欲望の抑圧が深刻な問題であり、貧困は精神をも縛りつける要因だった。ボールドウィンは金と性を並列させることで、物質的・肉体的欲望の支配力と、それが人間の自由をいかに制約するかを浮き彫りにしている。
現代においても、この洞察はなお有効である。経済的に困窮しているとき、人は将来の夢や文化的関心よりも「生活のための金」に囚われる。また、性的欲求の未充足が心の自由を妨げることもある。満たされることで初めて自由に他のことを考えられるというこの逆説は、人間存在の根本的な限界を示すものである。
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