「私は政治においてはアナーキストであり、美術においては印象派であり、文学においては象徴主義者である。――もっとも、これらの言葉の意味を理解しているわけではない。ただ私は、それらすべてを悲観主義者の同義語だと思っている」

- 1838年2月16日~1918年3月27日(80歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 歴史家、文筆家、政治評論家
英文
”I am an anarchist in politics and an impressionist in art as well as a symbolist in literature. Not that I understand what these terms mean, but I take them to be all merely synonyms of pessimist.”
日本語訳
「私は政治においてはアナーキストであり、美術においては印象派であり、文学においては象徴主義者である。――もっとも、これらの言葉の意味を理解しているわけではない。ただ私は、それらすべてを悲観主義者の同義語だと思っている」
解説
この名言は、近代思想と芸術潮流に対する自嘲的な距離感と、深い懐疑のまなざしを示したものである。ヘンリー・アダムズはここで、政治・芸術・文学の各分野で流行していた思想を名指ししながら、それぞれの立場に共通する「世界への不信」と「理想の喪失」を皮肉っている。そして、それらを一言でまとめて「pessimist(悲観主義者)」だと言い放つことで、近代的な思索の根底にある無力感や虚無感を浮き彫りにしている。
アナーキズム、印象主義、象徴主義――いずれも19世紀後半から20世紀初頭にかけて、既成の権威や写実、理性中心主義に対する反発から生まれた思想や様式である。アダムズはそれらに共鳴する一方で、それらの立場に自覚的であるがゆえに、「Not that I understand what these terms mean(それらの意味を理解しているわけではない)」という一節に知的な反省と皮肉のセンスがにじむ。ラベルよりも心情が本質であり、その心情とはすなわち「悲観」であるという結論に彼は至る。
この名言は、現代においても有効である。知的立場を標榜することの虚しさ、時代精神に適応しようとすることのむなしさ、そしてその背後にある根源的な不安と失望を表現している。アダムズのユーモアは、自己を貫く悲観と、それを笑いに変える知性の融合と言えるだろう。
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