「誰も自分の言うことすべてを本気で意味しているわけではなく、しかも自分の意味することすべてを口にする者はほとんどいない。なぜなら言葉は滑りやすく、思考は粘り気をもっているからだ」

ヘンリー・アダムズ(画像はイメージです)
ヘンリー・アダムズ(画像はイメージです)
  • 1838年2月16日~1918年3月27日(80歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 歴史家、文筆家、政治評論家

英文

”No man means all he says, and yet very few say all they mean, for words are slippery and thought is viscous.”

日本語訳

「誰も自分の言うことすべてを本気で意味しているわけではなく、しかも自分の意味することすべてを口にする者はほとんどいない。なぜなら言葉は滑りやすく、思考は粘り気をもっているからだ」

解説

この名言は、言葉と思考の間にある根本的なずれや不完全さを鋭く描き出している。ヘンリー・アダムズは、人は話すときにすべてを正確に言い表すことも、話したことすべてが本心を反映しているわけでもないという現実を見抜いている。「言葉は滑りやすく(slippery)」「思考は粘性がある(viscous)」という比喩には、表現の不安定さと思考の混沌・鈍重さが象徴されている。

この視点は、アダムズの知識人としての経験に裏打ちされたものである。彼は歴史や政治、教育といった領域で、理念と実態の間にあるギャップを深く見つめてきた。とりわけ、言葉がいかにして真意を歪めたり、時に誤解や操作の道具になったりするかを繰り返し目撃してきたがゆえに、言語による完全な理解や誠実な表現の困難さに強い認識を持っていた。

現代においても、SNSやメディアを通じた言語の断片化や誤解、意図しない炎上など、言葉の曖昧さや思考との乖離は日常的な問題である。この名言は、他者との対話や自己理解において、言葉に対する慎重さと謙虚さが不可欠であることを思い起こさせる。アダムズはここで、言葉を完全な媒介とみなす傲慢さへの戒めを、簡潔かつ詩的に提示している。

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