「かつての自分から残っているものはほとんどなく、その記憶だけだ。しかし、その記憶もまた新たな苦しみの形にすぎない」

シャルル・ボードレール(画像はイメージです)
シャルル・ボードレール(画像はイメージです)
  • 1821年4月9日~1867年8月31日(46歳没)
  • フランス出身
  • 詩人、評論家、「近代象徴詩の先駆者」

英文

”How little remains of the man I once was, save the memory of him! But remembering is only a new form of suffering.”

日本語訳

「かつての自分から残っているものはほとんどなく、その記憶だけだ。しかし、その記憶もまた新たな苦しみの形にすぎない」

解説

この言葉は、自己の変化と記憶の痛みを表している。人は時間とともに変わり、かつての自分は失われていく。残るのは記憶だけだが、その記憶が逆に喪失を意識させ、新たな苦しみを生む。ボードレールはこの矛盾した人間経験を鋭く描き出している。

19世紀フランスは都市化と社会の急激な変動により、人々は自己喪失や疎外感を強く抱いた時代であった。ボードレール自身も病や孤独、退廃に苦しみ、過去の自分と現在の自分の断絶を痛烈に感じていた。この言葉は、彼の生涯を支配した憂鬱(スプリーン)の感覚を象徴している。

現代でも、この感覚は多くの人に共通する。人生の節目で振り返ったとき、過去の自分との隔たりに苦しむことは少なくない。記憶は慰めにもなるが、同時に失われたものを突きつける。ボードレールの言葉は、記憶が救済と苦痛の両面を持つことを示し、時間と人間存在の儚さを深く思索させるのである。

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