「多数の声は、正義の証にはならない」

フリードリヒ・フォン・シラー(画像はイメージです)
フリードリヒ・フォン・シラー(画像はイメージです)
  • 1759年11月10日~1805年5月9日(45歳没)
  • ドイツ出身
  • 劇作家、詩人、歴史家、哲学者

英文

“The voice of the majority is no proof of justice.”

日本語訳

「多数の声は、正義の証にはならない」

解説

この言葉は、多数決や世論といった「数の力」が、必ずしも正義や真理を保証するものではないという、深い政治的・倫理的警告である。シラーは、理性と道徳に基づいた判断こそが真の正義であり、数の優位はしばしば感情や無知、偏見に支配されうることを見抜いていた。この名言は、民主主義の危うさと、個人の内なる判断の重要性を鋭く指摘している。

18世紀末の啓蒙思想において、理性と個人の尊厳が重視される一方、フランス革命後の暴民政治や多数派の専制(トクヴィルの言う「多数の専制」)への警戒も生まれた。シラーはこの歴史的背景の中で、多数の意見が倫理的に正しいとは限らず、むしろ少数者の声にこそ真理が宿る場合があることを強調したのである。

現代でも、SNSやメディアによって形成される世論、多数の支持を背景にしたポピュリズム、あるいは大衆迎合的な政策が、倫理や人権と衝突することは少なくない。この名言は、真の正義とは「数」ではなく「正しさ」によって決まるべきであり、たとえ孤独であっても理にかなった声を持ち続けることが、社会にとって必要な道であるという勇気ある姿勢を示している。正義は投票数では決まらない——それは理性と良心によって見出されるものである。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?

「フリードリヒ・フォン・シラー」の前後の名言へ


関連するタグのコンテンツ

【厳選】

申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最も新しい 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る