トマス・ホッブズ

- 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
- イングランド出身
- 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者
人物像と評価
トマス・ホッブズは、近代政治哲学の先駆者であり、代表作『リヴァイアサン』において国家権力の正当性と社会契約論を理論化した思想家である。
彼は自然状態を「万人の万人に対する闘争」として描き、人間の本性は利己的で暴力的であると捉えた。
そのため、人々が契約により強大な主権者に権力を委ねることで秩序が維持されると主張した。
この立場は絶対主義を理論的に擁護するものとされ、当時の王権を支持する根拠ともなった。
一方で、ホッブズの契約論は後のロックやルソーの自由主義的社会契約論にも影響を与えたため、近代民主主義の理論的基盤の一端をなすと評価されている。
ただし、人間観の悲観性や国家への権力集中を肯定した点については、自由主義の立場から批判も多い。
とはいえ、彼の功績は、政治と哲学を結びつけ、秩序と自由の問題を理論的に追究した点にあるといえる。
名言
- 「目に見えぬものへの恐れは、人が自らの内に宗教と呼ぶものの自然な種である」
- 「誰の利益や快楽にも反しないような真実は、すべての人に歓迎される」
- 「肉体はただ現在の嵐にのみ耐えるが、精神は過去と未来、そして現在の嵐にも耐える。大食は精神の欲望である」
- 「世界が住民で満ちあふれたとき、最後の救済は戦争であり、それは勝利か死によってすべての人に分け前を与える」
- 「法律を作るのは知恵ではなく権威である」
- 「科学とは、結果の知識であり、ある事実が別の事実に依存することの理解である」
- 「思慮とは経験にほかならず、平等な時間が、人が等しく取り組む事柄においては、等しくすべての人に授けるものである」
- 「賢者は、すべての人に理解される言葉で書くとしても、賢者のみが彼を称賛できるように書くべきである」
- 「余暇は哲学の母である」
- 「戦争においては、武力と詐術が二つの主要な徳である」
- 「ある私的な意見を認める者はそれを意見と呼び、嫌う者はそれを異端と呼ぶ。しかし異端とは、私的意見にほかならない」
- 「好奇心は精神の欲望である」
- 「人類すべての普遍的傾向として、権力に次ぐ権力を絶え間なく追い求める欲望があり、それは死によってのみ終わると私は述べる」
- 「自然権とは…各人が自らの力を用いて、自らの意志のままに自らの本性、すなわち自らの生命を保持する自由である」
- 「人々を畏怖させる共通の権力が存在しないとき、人々は戦争と呼ばれる状態にある。そしてその戦争とは、まさに万人の万人に対する戦いである」
- 「戦争とは単に戦闘や戦う行為そのものではなく、戦闘によって争おうとする意思が十分に知られている一定の期間を指す」
- 「人は、他者もそうするのであれば、平和と自己防衛のために必要と考える範囲において、あらゆることへの権利を放棄し、他人に対して自らが認めたいと望むのと同じ程度の自由で満足すべきである」
- 「言葉は愚者の貨幣である」
- 「我々が生きている限り、精神の永続的な安らぎというものは存在しない。なぜなら生命そのものが運動であり、感覚なしに存在できないのと同じく、欲望や恐れなしに存在することもできないからである」
- 「人は、自らの生命を奪おうとする者の暴力に抵抗する権利を放棄することはできない」
- 「臣民の君主に対する義務は、君主が彼らを保護する力を持つ限りにおいて存続し、それ以上には及ばないと理解される」
- 「人間の本性とはそのようなものである。自分より機知に富む者、雄弁な者、博識な者が多くいることは認めても、自分と同じほど賢明な者が多くいるとはなかなか信じようとしない」
- 「捕らえられて牢や鎖につながれた者は、打ち負かされたとしても征服されたわけではない。彼はいまだ敵である」
- 「自然状態においては、利益が権利の尺度である」
- 「私は最後の航海に出ようとしている。暗闇への大いなる飛躍だ」
- 「人間の秘められた思考は、聖なるものから俗なるもの、清浄なものから卑猥なもの、重大なものから軽薄なものに至るまで、恥も咎めもなく駆け巡る」
- 「誰かの誤りがその人自身の法となることはなく、その誤りに固執する義務もない」
- 「笑いとは、他者の弱さやかつての自分と比較して、自分に何らかの優越を突然に思い描くときに生じる、突発的な優越感にほかならない」
- 「突発的な優越感という情念こそが、笑いと呼ばれるあの表情を生み出す」
- 「理解とは、言葉によって引き起こされる概念にほかならない」
- 「不条理という特権は、人間のみが持ち、他の生き物はいずれも持たない」
- 「教皇権とは、滅びたローマ帝国の亡霊にほかならず、その墓の上に冠を戴いて座しているのである」
- 「古代の著者たちが称賛されるのは、死者への敬意からではなく、生者同士の競争と相互の嫉妬から生じるのである」
- 「人間の状態とは…万人の万人に対する戦いの状態である」
- 「人の良心と判断は同じものであり、判断が誤るように、良心もまた誤ることがある」