「富士には、月見草がよく似合う」

- 1909年6月19日~1948年6月13日(38歳没)
- 日本出身
- 小説家
原文
「富士には、月見草がよく似合う」
解説
この言葉は、太宰治が晩年の小説『富嶽百景』の中で記した有名な一節である。雄大で堂々たる富士山に対し、儚く素朴な月見草がよく似合うと述べたもので、偉大さと慎ましさの調和を象徴している。太宰は、この対比の中に人間の生の在り方を重ね、偉大さは華美な装飾ではなく、むしろ質素で控えめなものによって引き立つのだと語っている。
昭和初期の時代、富士山は日本の象徴として称えられ、多くの文学者や芸術家がその荘厳さを讃えた。しかし太宰は、ただ雄大さを賛美するのではなく、月見草という小さな花を添えることで、富士の美をより深く際立たせる視点を提示した。この発想は、彼自身の文学的姿勢――大きな主題を小さな人間の視点から照らす――とも重なる。
現代においても、この言葉は多義的な解釈を呼ぶ。権力や偉大さを誇示するのではなく、ささやかなもの、弱々しいものとの共存にこそ本当の美が宿るという太宰の感覚は、今も人々の心に響く。月見草は富士を引き立てる存在であると同時に、慎ましくも強い生の象徴として読むこともでき、太宰文学を代表する象徴的な一句として広く知られている。
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