「そもそも私は『文化』という言葉がきらいである。文のお化けという意味であろうか」

- 1909年6月19日~1948年6月13日(38歳没)
- 日本出身
- 小説家
原文
「そもそも私は『文化』という言葉がきらいである。文のお化けという意味であろうか」
解説
この言葉は、太宰治が「文化」という概念そのものへの皮肉と懐疑を示したものである。文化は本来、人間社会の知的・芸術的営みを肯定的に指す言葉であるが、太宰はそれを「文のお化け」と揶揄し、虚飾や形式にすぎないものとして嫌悪している。彼にとって文化は生の実感から切り離された空虚な言葉であり、むしろ人間の素朴な生活から乖離した存在に見えたのである。
昭和初期の日本は「文化国家」を標榜し、学問や芸術に高い価値を与えていた。しかし、その一方で戦争や貧困が現実を覆い隠していた。太宰はその矛盾を感じ取り、文化という言葉が人間の苦悩を覆い隠す虚飾にすぎないと見抜いた。この発言には、作家として文化の一翼を担いながらも、それに対する不信と疎外感を抱いた太宰の複雑な心情が表れている。
現代においても、この言葉は示唆的である。文化はしばしば「高尚」や「立派さ」と結びつけられるが、それが現実の生活や人間の痛みに根ざしていなければ空虚な言葉に過ぎない。太宰の皮肉は、文化を飾り立てるのではなく、日常の人間性の中にこそ本当の価値があるのだと問いかけているのである。
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