「私には兄と妹がいます。母は考えることに関心がなく、父は訴訟に追われて私たちのすることに気づきません。父はたくさんの本を買ってくれますが、それらを読まないでくれと頼みます。読むと心がぐらつくと恐れているのです」

エミリー・ディキンソンの名言・格言・警句
エミリー・ディキンソンの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1830年12月10日~1886年5月15日(55歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 詩人

英文

”I have a brother and sister; my mother does not care for thought, and father, too busy with his briefs to notice what we do. He buys me many books, but begs me not to read them, because he fears they joggle the mind.”

日本語訳

「私には兄と妹がいます。母は考えることに関心がなく、父は訴訟に追われて私たちのすることに気づきません。父はたくさんの本を買ってくれますが、それらを読まないでくれと頼みます。読むと心がぐらつくと恐れているのです」

解説

この言葉は、エミリー・ディキンソンの家庭環境と知性への抑圧を鋭く示す告白的表現である。家族という最も身近な存在が、思索や読書といった精神活動に対して無理解か、あるいは抑制的であることへの静かな抵抗が込められている。

mother does not care for thought(母は考えることに関心がない)」という一文は、家庭内における知的な孤立を象徴しており、「father…too busy with his briefs(父は訴訟で忙しくて私たちを顧みない)」という言葉も、物理的には近くにいても精神的に距離のある父親像を描いている。さらに、「he buys me many books, but begs me not to read them(本を買い与えながら読むなと懇願する)」という矛盾は、女性が知を持つことへの当時の社会的警戒心**を反映している。

19世紀のアメリカ社会において、特に女性が深く思索し、文学や哲学に没頭することは、「家庭的であること」や「従順さ」と相容れないものとみなされた。この言葉は、そうした環境の中で精神の自由を渇望し、詩を通して自己を解放しようとしたディキンソンの切実な姿を映し出している。現代の視点から見ても、これは思考の自由と、それを脅かす無理解や恐れへの抵抗の表現であり、読む者の心に深く訴える力を持っている。

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