「金を贅沢に費やすとき、貧しい者に益を与えずにはいられない。いや、贅沢に費やすことは、施しをするよりも彼らにとって有益である。なぜなら贅沢に費やすことで彼らに労働を促すが、施しは彼らを怠惰にしてしまうからである」

- 1709年9月18日~1784年12月13日
- イギリス出身
- 詩人、評論家、辞書編纂者、伝記作家
英文
”You cannot spend money in luxury without doing good to the poor. Nay, you do more good to them by spending it in luxury, than by giving it; for by spending it in luxury, you make them exert industry, whereas by giving it, you keep them idle.”
日本語訳
「金を贅沢に費やすとき、貧しい者に益を与えずにはいられない。いや、贅沢に費やすことは、施しをするよりも彼らにとって有益である。なぜなら贅沢に費やすことで彼らに労働を促すが、施しは彼らを怠惰にしてしまうからである」
解説
この言葉は、贅沢と施しの社会的効果についての逆説的な見解を示している。ジョンソンは、富者が贅沢をすれば需要が生まれ、それが生産や労働の機会を広げ、貧者に仕事を与えると考えた。対して、直接の施しは一時的救済にとどまり、かえって労働意欲を削ぐと批判している。ここには、経済活動を通じた富の循環という早期の経済思想が表れている。
18世紀イギリスは商業と消費文化の発展期であり、「贅沢の擁護」論と「贅沢の堕落」論が盛んに議論されていた。ジョンソンは前者に近い立場をとり、富の消費は社会全体に活力を与えると考えたのである。この視点は、当時の経済学者マンデヴィルや後のアダム・スミスの議論とも響き合う。
現代においても、この議論は消費と福祉の問題に通じる。富裕層の贅沢な支出が経済活動を刺激する一方で、直接的な援助は依存を生む可能性があるという指摘は、ケインズ経済学や現代の経済政策にも通じる。もちろん今日では福祉の意義も認められるが、ジョンソンの言葉は、消費の社会的効用と労働倫理の重要性を強調する鋭い洞察として今なお響いているのである。
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