「同じ一つのものが、同時に善であり、悪であり、無関係でもあり得る。例えば音楽は、憂鬱な人には善であり、悲嘆に暮れる人には悪であり、耳の聞こえない人には善でも悪でもない」

- 1632年11月24日~1677年2月21日(44歳没)
- オランダ出身(ポルトガル系ユダヤ人)
- 哲学者、合理主義思想家
英文
”One and the same thing can at the same time be good, bad, and indifferent, e.g., music is good to the melancholy, bad to those who mourn, and neither good nor bad to the deaf.”
日本語訳
「同じ一つのものが、同時に善であり、悪であり、無関係でもあり得る。例えば音楽は、憂鬱な人には善であり、悲嘆に暮れる人には悪であり、耳の聞こえない人には善でも悪でもない」
解説
この言葉は、価値が絶対的なものではなく相対的であることを示している。ある対象や行為の良し悪しは、そのもの自体に内在するのではなく、それを受け取る人間の状態や状況によって変化する。つまり、価値判断は人間の感情や境遇と切り離せず、普遍的に「善」や「悪」と断定できるものは存在しないというのである。
スピノザの哲学では、自然界のすべては必然の連鎖の中に存在し、その中で人間の感情もまた自然の一部である。したがって、人間の感じ方や評価は相対的であり、対象そのものには絶対的な価値はない。この立場は、彼の倫理学における「事物はそれ自体で善悪を持たず、我々の欲望や感情に応じて評価される」という原理に対応している。
現代社会においても、この視点は重要である。例えば、SNSや文化的な表現はある人にとって励ましであっても、別の人にとっては不快となり得る。あるいは、経済政策や技術革新も、人によって恩恵とも害悪とも映る。この言葉は、善悪を一面的に決めつけず、多様な立場から理解する柔軟さの必要性を説いている。
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