「法律家は、法律の無知が処罰されない唯一の人々である」
- 1748年2月15日～1832年6月6日（84歳没）
- イギリス出身
- 哲学者、法学者、社会改革者
英文
”Lawyers are the only persons in whom ignorance of the law is not punished.”
日本語訳
「法律家は、法律の無知が処罰されない唯一の人々である」
解説
この言葉は、法律家に対する痛烈な皮肉を込めたものである。一般市民が「法律を知らなかった」と弁解しても、それは免罪の理由にはならない。法律は知らなければならない義務を前提にしており、無知は責任を免れない。しかし、法律家自身が法律の不確かさや複雑さを利用して権威を保ち、時に誤りや不明確な解釈をしても処罰されないという矛盾を突いているのである。ここには、法律専門職が制度的に優位な立場を保持していることへの批判がある。
この発想は、ベンサムが強く求めた法の明確化と合理化の文脈で理解される。当時のイギリスの法律は慣習法や判例に依存して複雑であり、一般市民には理解が難しかった。ベンサムは、功利主義の立場から法律は誰にでも分かるべきだと考え、成文法の整備と透明性の向上を主張した。この言葉は、そうした改革思想の中で、既存の法律家の特権構造を批判したものといえる。
現代においても、この言葉は法的専門職と市民の距離を考える上で重要である。例えば、複雑化した税法や企業法務の世界では、専門家が知識の独占によって大きな影響力を持つ。一方で、法教育の充実や情報公開により、一般市民が自らの権利を理解しやすくする取り組みも進められている。ベンサムの言葉は、今日においても法律を誰もが理解可能な形にする必要性を示す鋭い指摘として響いている。
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