「無学を以て人に誇り、哲学を空理なりといい、真善美の三つを説くものを迂人なりというものの憎むべき、責むべきは、学を衒うものより甚しかるべし」

森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、翻訳家、軍医

原文

「無学を以て人に誇り、哲学を空理なりといい、真善美の三つを説くものを迂人なりというものの憎むべき、責むべきは、学を衒うものより甚しかるべし」

解説

この言葉は、学問や哲学を軽視し、知的探求を嘲る態度への強い批判である。「無学を以て人に誇り」とは、学問の無さをむしろ自慢し、知識を持つことを価値の低いものと見なす姿勢を指す。「哲学を空理なり」というのは、哲学を現実離れした無用の理論と決めつけることであり、「真善美を説くものを迂人(愚か者)なり」というのは、高い理想や価値観を追う人を嘲笑する態度を表す。

筆者はこうした態度を、「学を衒(てら)う」つまり知識をひけらかす人間よりもさらに憎むべきものであり、責められるべきだと断じている。なぜなら、知識を誇示する者は少なくとも学問の価値を理解しているが、無学を誇る者はそもそも社会の知的水準や文化的発展を阻害するからである。

現代でも、反知性主義や学問軽視の風潮はしばしば見られる。例えば、専門的議論を「机上の空論」と切り捨てたり、文化・芸術を「役に立たない」と片付けたりする態度がそれにあたる。この言葉は、知を否定する傲慢こそが社会を停滞させる最大の要因であるという警告としても通用する。

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