「鳩の卵を抱いているとき、卵と白墨の角を刓したのと取り換えて置くと、矢張其白墨を抱いている。目的は余所になって、手段丈が実行せられる」

森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、翻訳家、軍医

原文

「鳩の卵を抱いているとき、卵と白墨の角を刓したのと取り換えて置くと、矢張其白墨を抱いている。目的は余所になって、手段丈が実行せられる」

解説

この言葉は、本来の目的を見失い、手段だけが惰性的に続けられる人間の行動パターンを、鳩の習性に例えて説明している。鳩は卵の代わりに形状が似た白墨を置かれても、区別せず抱き続ける。この行動は、最初の目的(卵を温めて孵す)ではなく、「抱く」という行為そのものが目的化してしまった状態を象徴している。

背景として、この観察は社会や組織の中で起こる形式主義や慣習の固定化を批判するものと考えられる。明治から大正期の日本は制度改革と西洋化が進む中で、形だけの模倣や、本来の意義を忘れた制度運用が多く見られた。鴎外は、このような「目的なき継続」や「手段の自己目的化」を警戒していたと考えられる。

現代への応用としては、ビジネスや行政、教育において、当初の目的や意義を定期的に点検し、形骸化を防ぐ必要性を示唆している。例えば、会議や報告書作成、規則運用が「なぜそれをやるのか」という原点を忘れたまま続けられている場合、それは白墨を抱く鳩と同じ状態である。

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