「哲学者というものは、人間の万有の最終問題から観察している。外から覗いている」

- 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、翻訳家、軍医
原文
「哲学者というものは、人間の万有の最終問題から観察している。外から覗いている」
解説
この言葉は、哲学者の視点の位置づけと、その距離感について述べている。森鴎外は、哲学者とは人間や世界に関するあらゆる事柄の「最終問題」――存在の意味、真理、価値、目的など――から物事を観察する人であると定義している。しかし同時に、その立場は日常生活のただ中ではなく、外側から全体を俯瞰し、覗き込むような距離を持っていると表現している。
この発想の背景には、鴎外自身が文学者でありつつ、医師・軍人として現実社会の中に生きていた経験がある。日常の現場に深く関わる者と、哲学的立場から俯瞰する者の間には距離があり、その距離こそが哲学者に独自の洞察を与える一方で、現実感覚との乖離を生むこともある。哲学は現実から離れてこそ普遍性を持つが、その離れ方に限界もあるという認識が込められている。
現代においても、この言葉は哲学や理論の役割を考える上で示唆に富む。政策決定や科学研究などの実務の現場と、倫理や存在論を論じる哲学の立場は異なり、しばしば相互理解が難しい。しかし、その距離があるからこそ、日常の枠に縛られない広い視野からの洞察が可能になる。この言葉は、哲学者の役割と立ち位置を簡潔に言い表している。
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