「秩序を無用の抑圧だとして、無制限の自由で人生の階調が成り立つと思っている人達は、人間の欲望の力を侮っているのではあるまいか」

森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、翻訳家、軍医

原文

「秩序を無用の抑圧だとして、無制限の自由で人生の階調が成り立つと思っている人達は、人間の欲望の力を侮っているのではあるまいか」

解説

この言葉は、秩序と自由の関係、そして人間の欲望の制御の必要性について述べている。森鴎外は、秩序を単なる抑圧と見なし、完全な自由のもとで社会や人生がうまく成り立つと考える人々は、人間の欲望が持つ破壊力や暴走の可能性を軽く見ているのではないかと問いかけている。ここでの「人生の階調」とは、社会や人間関係の調和やバランスを指す。

この発想の背景には、明治から大正期の思想状況がある。当時、自由主義や個人主義が広まり、旧来の権威や秩序を否定する動きが強まっていた。しかし鴎外は、社会秩序をすべて否定し無制限の自由を認めれば、人間の自己抑制の限界によって混乱や衝突が避けられないと見ていた。これは軍医・官僚として秩序維持の現場を経験し、また作家として人間の内面を観察してきた彼ならではの視点である。

現代でも、この言葉は社会制度や自由の議論に通じる。例えば、規制を完全に撤廃すれば市場や言論の自由は広がるが、同時に格差やフェイク情報、暴力的言動の横行といった副作用が生じる。自由は秩序と制御によって初めて持続可能になるというこの指摘は、時代を超えて現実的かつ普遍的な洞察を与えている。

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