「第一流でもなんでも、小説家である以上は、政府は厄介ものだと思っているのだから、死んでくれれば喜ぶのである」

- 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、翻訳家、軍医
原文
「第一流でもなんでも、小説家である以上は、政府は厄介ものだと思っているのだから、死んでくれれば喜ぶのである」
解説
この言葉は、政府と文学者、とりわけ小説家との緊張関係を辛辣に表現している。森鴎外は、どれほど優れた小説家であっても、政府から見ればしばしば厄介な存在とみなされると述べている。これは、小説家が社会や政治を批判したり、現状を揺るがす思想を広めたりする可能性があるためであり、権力にとっては制御しづらい不安要素となるからである。極端な言い方ではあるが、「死んでくれれば喜ぶ」という表現には、その根深い対立構造が込められている。
この発想の背景には、明治から大正期の言論統制や検閲制度がある。当時、文学作品も検閲の対象となり、政治的・社会的に不穏とみなされる表現は削除や発禁処分を受けた。鴎外は作家であると同時に官僚として政府側の立場も経験しており、権力と表現者の間に横たわる構造的な不信感を熟知していた。
現代においても、この構図は完全には消えていない。政治権力は時に批判的なジャーナリストや作家を敵視し、言論を抑圧しようとすることがある。この言葉は、権力と創作・言論の自由との本質的な緊張関係を鋭く突き、時代を超えて警鐘として響く。
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