「昔は孔子がたった一人だったから、孔子も幅を利かしたのだが、今は孔子が幾人も居る」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「昔は孔子がたった一人だったから、孔子も幅を利かしたのだが、今は孔子が幾人も居る」
解説
この言葉は、時代や環境の変化によって権威や影響力の希少性が失われる現象を皮肉を交えて表している。昔は孔子のような卓越した思想家や道徳的指導者は非常に稀であり、その存在が際立って大きな影響力を持った。しかし現代では、知識や学問、道徳を説く人が数多く存在し、一人の人物が圧倒的な権威を持つことは難しくなっているという指摘である。
この発想の背景には、漱石の近代社会における権威観の変化がある。明治期の日本は教育制度の普及や出版文化の発展により、多くの知識人や論者が世に出るようになった。漱石はこの現象を、情報や人物の増加によって希少性が薄れ、かつてのような唯一無二の存在感が持ちにくくなった時代として捉えていた。
現代においても、この視点は当てはまる。インターネットやSNSの発達により、専門知識や意見を発信する人は無数に存在し、誰か一人が絶対的権威として君臨することは稀である。知識や思想が広く共有される一方で、権威の集中は弱まり、影響力は分散する——この言葉は、その変化を簡潔かつ風刺的に言い表している。
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