「文明の社会は血を見ぬ修羅場である」

夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、英文学者

原文

「文明の社会は血を見ぬ修羅場である」

解説

この言葉は、表面上は平穏に見える文明社会も、実際には熾烈な競争や利害の衝突が絶えない場であるという現実を、鋭い比喩で表している。「修羅場」とは本来、激しい戦いや争いの場を意味するが、ここでは流血や暴力といった直接的な形ではなく、経済活動、政治、社会関係の中で繰り広げられる無血の闘争を指している。

この発想の背景には、漱石の文明批評と人間観がある。明治期の日本は近代化と産業化が急速に進み、都市では階層間競争や商業的争奪が激化していた。表面的には秩序が保たれていても、その裏では人々が地位や利益を巡ってしのぎを削り合っていた。漱石は、文明社会の「洗練」と「闘争」の二面性を見抜き、暴力なき戦場としての現代社会を描き出したのである。

現代においても、この言葉は変わらず通用する。ビジネス競争、政治駆け引き、SNS上での論争などは、流血こそ伴わないが、精神的消耗や人間関係の破壊をもたらすことがある。文明社会の修羅場は、武器ではなく言葉や制度、資本を用いた戦いであるという漱石の視点は、時代を超えて鮮やかに当てはまる。

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