「文学者なんてものは綺麗な事を吐く割に、綺麗な事をしないものだ」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「文学者なんてものは綺麗な事を吐く割に、綺麗な事をしないものだ」
解説
この言葉は、文学者の言葉と行動の乖離を率直に指摘している。文学者は作品の中で理想や美徳、高尚な思想を語るが、実生活においては必ずしもそれに沿った行動をとるとは限らない。つまり、表現の世界での「綺麗な事」と、現実の人間としての振る舞いは別であり、そのギャップがしばしば露わになるという批評である。
この発想の背景には、漱石の自己省察と同業者への批判がある。明治期は文学が社会的影響力を持ち始め、作家が道徳的指導者のように見られることもあった。しかし漱石は、人間としての弱さや矛盾は文学者にも当然存在し、言葉の美しさと人間性の完全さは必ずしも一致しないと冷静に見ていた。この言葉は、文学者を偶像化する風潮への皮肉でもある。
現代においても、この洞察は通用する。作家や思想家、芸術家が発信する理念や価値観は立派でも、私生活や行動がそれに伴わない事例は少なくない。大切なのは言葉そのものの価値を見極めつつ、発信者を過度に神格化しない姿勢である。この言葉は、表現と現実を混同しない冷静な視点を促している。
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