「我々を恋愛から救うものは理性よりもむしろ多忙である。恋愛もまた完全に行われるためには何よりも時間を持たなければならぬ。ウェルテル、ロミオ、トリスタンーー古来の恋人を考えて見ても、彼らはみな閑人ばかりである」

芥川龍之介の名言・格言・警句(画像はイメージです)
芥川龍之介の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1892年3月1日~1927年7月24日
  • 日本出身
  • 小説家、評論家

原文

「我々を恋愛から救うものは理性よりもむしろ多忙である。恋愛もまた完全に行われるためには何よりも時間を持たなければならぬ。ウェルテル、ロミオ、トリスタンーー古来の恋人を考えて見ても、彼らはみな閑人ばかりである」

解説

この言葉では、恋愛という情熱的な感情から人を遠ざけるのは、理性よりもむしろ「多忙さ」だという逆説的な真理が語られている。人は、どれほど理性で恋愛を抑えようとしても、実際には忙しくしている方がよほど恋愛から距離を取れるという、経験的で皮肉な観察である。

また後半では、恋愛が深まり悲劇となるためには「時間」が必要であるという指摘がなされる。ゲーテのウェルテル、シェイクスピアのロミオ、トリスタンとイゾルデなど、古典的な恋人たちは皆「仕事に追われることのない暇人」であるという視点を通じて、恋愛が成立し、燃え上がるには現実的余裕=時間的なゆとりが必要だと示唆している。

この名言は、恋愛の本質と人間の感情の動きに対する冷静かつ皮肉な洞察を含んでおり、忙しさがもたらす感情の鈍化と、それによる「救い」について考えさせる。恋愛は詩的であるが、それを生きるには現実的な「暇」が不可欠だという、二律背反的な構造がこの一文に表れている。

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