「我々日本人の二千年来君に忠に孝だったと思うのは猿田彦命もコスメ・ティックをつけていたと思うのと同じことである。もうそろそろありのままの歴史的事実に徹して見ようではないか?」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「我々日本人の二千年来君に忠に孝だったと思うのは猿田彦命もコスメ・ティックをつけていたと思うのと同じことである。もうそろそろありのままの歴史的事実に徹して見ようではないか?」
解説
この言葉は、日本の伝統的な価値観や歴史観に対する痛烈な皮肉を含んでいる。「君に忠、親に孝」という儒教的な倫理が、日本人の本質として二千年にわたって変わらず存在していたと信じるのは幻想に過ぎないと芥川は述べる。その幻想は、神話の神である猿田彦命が化粧をしていたと信じるような荒唐無稽さに等しいと指摘する。
この言葉が発せられた背景には、明治以降の日本において強調された皇国史観や国家神道の影響がある。国家は国民に対し「忠君愛国」や「孝行」を強いる教育を行っていたが、芥川はそれに対して冷ややかであった。歴史はイデオロギーで塗り替えられるものではなく、事実に基づくものでなければならないという考えが、彼の根底にある。
現代社会においても、ナショナリズムや美化された歴史認識が社会を誤らせる危険性がある。芥川のこの言葉は、過去を神話化せず、理性的・実証的に歴史と向き合うことの重要性を訴えている。国家や文化の「建前」ではなく、人間の真実と複雑さに目を向けよというメッセージが込められているのである。
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