「夜半の隅田川は何度見ても、詩人S・Mの言葉を越えることは出来ない。ーー『羊羹のように流れている』」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「夜半の隅田川は何度見ても、詩人S・Mの言葉を越えることは出来ない。ーー『羊羹のように流れている』」
解説
この名言は、詩的表現の力が時として現実の美しさすら凌駕するという芥川の実感を伝えている。彼は幾度となく隅田川の夜半の景色を目にしているが、それでも詩人S・M、室生犀星(むろうさいせい)の表現──「羊羹のように流れている」──の鮮烈な印象を超えることができなかったのである。
「羊羹のように」という比喩は、隅田川のとろりとした暗い光沢や静かな流れを見事に捉えた、極めて日本的で繊細な表現である。この比喩には、単なる視覚的描写以上に、甘味や重み、滑らかさといった感覚的な広がりがある。芥川はこの言葉に、詩的言語の力、すなわち現実の風景に命を吹き込む言葉の魔術を見出しているのである。
現代においてもこの名言は、鋭い観察と言語感覚の結晶としての「詩」の力を再認識させる。それは、誰もが目にする景色でも、言葉一つでその意味や印象が一変するという文芸の本質を象徴している。芥川は詩人の一語に敬意を払い、自らの観察すらもその表現の前にひれ伏すのである。
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