「僕らが独創と呼ぶものは僅かに前人の跡を脱したのに過ぎない。しかもほんの一歩ぐらい、ーーいや、一歩でも出ているとすれば、たびたび一時代を震わせるのである」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「僕らが独創と呼ぶものは僅かに前人の跡を脱したのに過ぎない。しかもほんの一歩ぐらい、ーーいや、一歩でも出ているとすれば、たびたび一時代を震わせるのである」
解説
この名言は、独創性の本質とは、過去の蓄積の上にわずかに生まれるものであるという芥川の芸術観を語っている。「独創」は全くの無から生まれる神秘的な力ではなく、前人の成果を深く理解したうえで、そこから一歩踏み出すことにこそ本質があるという思想が示されている。
芥川は「一歩でも出ている」と表現することで、その差異がいかに微小であっても、文化や芸術においては時代を揺るがすほどの力を持つことを強調している。この発想は、創造とは連続性の中にあるわずかな変化であるという認識につながる。それは、革新を生むためにはまず伝統や過去を理解しなければならないという警句でもある。
現代においても、技術・芸術・思想の分野で革新とされるものの多くが、過去の枠組みに基づいたわずかな飛躍である。芥川のこの言葉は、真の創造とは、歴史に無知な飛躍ではなく、深い理解に基づく小さな越境であるということを教えてくれる。独創性の正体を明快に語るこの一節は、すべての表現者にとって普遍的な洞察を含んでいる。
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