「僕は憂鬱になり出すと、僕の脳髄の襞ごとに虱がたかっているような気がしてくるのです」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「僕は憂鬱になり出すと、僕の脳髄の襞ごとに虱がたかっているような気がしてくるのです」
解説
この名言は、芥川の憂鬱という精神状態を、強烈な感覚的比喩によって描いた一文である。「脳髄の襞ごとに虱がたかる」という表現は、単なる気分の沈みを超えて、精神の深部にまで浸透する不快感や苦悩を生々しく表現している。ここには、内面的な病理への鋭い自覚と観察力があらわれている。
「虱」は本来、皮膚の外部に寄生するものであるが、それが「脳髄の襞」にまで入り込むという表現は、憂鬱が思考や感覚の細部にまで染み込み、逃れられない苦痛となることを象徴している。これはまさに、憂鬱症的な感覚の視覚化・身体化であり、芥川の神経質で過敏な内面世界を象徴する言葉でもある。
このような比喩は、現代においてもうつ病や神経症などに悩む人々が感じる「漠然としたが全身に及ぶ苦しさ」を思い起こさせる。芥川は、その苦しみを文学的に昇華しつつ、言語で伝え得ない精神の痛みを、逆説的に言語で描き出すという挑戦をしている。この名言は、彼の内面的闇の深さと、文学者としての繊細な表現力の両方を証明するものにほかならない。
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