「自分は大川があるが故に『東京』を愛し、『東京』あるが故に、生活を愛するのである」

芥川龍之介の名言・格言・警句(画像はイメージです)
芥川龍之介の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1892年3月1日~1927年7月24日
  • 日本出身
  • 小説家、評論家

原文

「自分は大川があるが故に『東京』を愛し、『東京』あるが故に、生活を愛するのである」

解説

この名言は、個人的な愛着の連鎖が、都市や人生全体への愛へと広がっていく感情の構造を描いている。芥川は、東京に流れる「大川」(現在の隅田川)を愛することが、やがて東京という都市全体を愛することに結びつき、さらにその東京があるからこそ、日々の生活そのものを肯定できるようになると述べている。つまり、小さな対象への愛情が、次第に拡大し、人生そのものへの肯定へと昇華されるのである。

この言葉には、芥川の繊細な感受性と都市生活への深い愛着が滲んでいる。彼は東京の風景、とりわけ大川の流れに、文学的・詩的な情緒と精神的安定を見出していた。文明と自然、雑踏と静けさが交錯するこの都市の中で、ある一つの風景が生の価値を感じさせる核となっているのは、芥川の都市観と生への希薄な肯定が交差する象徴的表現である。

現代においても、この感覚は多くの人に共有され得る。たとえば、ある街のカフェ、並木道、夕暮れの風景といったささやかな場所や瞬間が、その人の都市への愛情、ひいては人生観に深く結びつくことがある。芥川のこの名言は、人生の意味や価値が壮大な理念ではなく、ごく私的な愛着から始まりうることを静かに語っているのである。

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