「臆病は文明人のみの持っている美徳である」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「臆病は文明人のみの持っている美徳である」
解説
この名言は、一見否定的に捉えられがちな「臆病」という性質を、逆説的に肯定する芥川特有の知的な挑発である。ここで言う「臆病」とは、単なる怯えや意気地のなさではなく、衝動的な行動を避け、理性や慎重さによって判断する態度を意味している。芥川はそれを、文明という枠組みの中で培われた高度な感受性と知性の証として捉えている。
このような思想は、芥川が生きた時代の国家主義や軍国主義的傾向への批判的距離感とも関係している。20世紀初頭の日本では、勇気や自己犠牲が美徳とされ、臆病や躊躇は軽蔑の対象とされた。しかし芥川は、そうした単純な価値観に異を唱え、文明社会においてこそ「臆病」は思慮深さや人道的配慮の源となると考えた。これは彼の平和主義的で理知的な世界観をよく示すものである。
現代においてもこの言葉は重要な示唆を含む。たとえば、戦争や環境破壊、技術の暴走に対して「慎重に恐れること」こそが進んだ社会の証であるという視点は、今も通用する。芥川のこの名言は、感情の赴くままに行動するのではなく、恐れを自覚し、理性によって行動を制御することの価値を改めて教えているのである。
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