「人間が空を飛べず、地上に加えて空までも荒廃させられないことを、神に感謝すべきだ」

ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1817年7月12日~1862年5月6日
  • アメリカ合衆国出身
  • 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“Thank God men cannot fly, and lay waste the sky as well as the earth.”

日本語訳

「人間が空を飛べず、地上に加えて空までも荒廃させられないことを、神に感謝すべきだ」

解説

この言葉は、人間の技術進歩による自然破壊への痛烈な皮肉である。ソローは、地上の自然――森や川、大地――が人間の手によって無残に破壊されていくのを見て、もし人間が空までも自由に飛び回ることができたなら、そこもまた容赦なく荒らされるに違いないと予見していた。これは、人間の欲望と愚かさが文明の名の下に自然を破壊してきた事実への警鐘でもある。

この発言は、19世紀という飛行機のない時代にありながら、人間が制空権を得たときに起こりうる環境破壊を直感的に捉えていた点で、非常に先見的である。ソローの自然主義は、自然の美と秩序を敬い、人間は自然の一部として慎ましく生きるべきだという倫理に貫かれている。この名言には、技術の進歩が道徳や節度を伴わなければ破壊的になるという深い警告が込められている。

現代において、空を飛ぶことは現実となり、航空機による環境負荷や軍事利用による空の荒廃も深刻な問題となっている。この言葉は、人間の能力が増すほど、その責任と節制も増すべきであるという、今なお通用する倫理的メッセージを投げかけている。ソローは、自然との共生の限界を超えてしまった文明に対し、痛烈かつ静かな批判のまなざしを向けていたのである。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最新 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る