「もし人が森を愛して一日の半分をその中を歩いて過ごせば、怠け者と見なされる危険がある。しかし、その森を切り倒し、大地を早々に禿げさせる投機家として日々を過ごすならば、勤勉で進取の気性に富んだ市民と称されるのだ」

ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1817年7月12日~1862年5月6日
  • アメリカ合衆国出身
  • 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“If a man walks in the woods for love of them half of each day, he is in danger of being regarded as a loafer. But if he spends his days as a speculator, shearing off those woods and making the earth bald before her time, he is deemed an industrious and enterprising citizen.”

日本語訳

「もし人が森を愛して一日の半分をその中を歩いて過ごせば、怠け者と見なされる危険がある。しかし、その森を切り倒し、大地を早々に禿げさせる投機家として日々を過ごすならば、勤勉で進取の気性に富んだ市民と称されるのだ」

解説

この言葉は、社会が持つ価値判断の逆説と偽善を痛烈に批判している。ソローは、自然を愛し静かに共に過ごす行為が無価値とされ、破壊的な経済活動が称賛される社会の倒錯を鋭く指摘している。ここでは、「森」が自然と調和する生き方の象徴であり、「投機家」は自然を犠牲にして利益を追う近代資本主義の象徴である。

この思想は、ソローの自然観と社会批判の本質を体現している。彼は『ウォールデン』を通じて、自然の中に人間性の根源と倫理を見出した。一方で、無反省に自然を搾取する産業社会に対しては、人間の精神の荒廃と道徳の退廃を見ていた。この名言は、真に価値ある行為が見過ごされ、破壊的な行為が賞賛される社会の不条理を告発している。

現代においても、環境破壊を伴う開発が「経済成長」として奨励され、自然との共生を求める行為が非効率とされる傾向がある。この言葉は、そうした風潮に対し、人間の幸福や社会の健全さがどこにあるのかを根源から問い直す視点を与えてくれる。ソローの訴えは、真の勤勉さとは自然と共に生きることにこそ宿るという倫理的洞察を今もなお私たちに投げかけているのである。

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