「人が絶えず向上を目指しているならば、その人はすでに高められているのではないか」

• 1817年7月12日～1862年5月6日
• アメリカ合衆国出身
• 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“If a man constantly aspires is he not elevated?”

日本語訳

「人が絶えず向上を目指しているならば、その人はすでに高められているのではないか」

解説

この言葉は、人間の価値や精神の高さは、現実の成果ではなく、その人が持つ意志や志に宿るという思想を簡潔に示している。ソローは、外的な評価や成功よりも、内面的な努力と理想に向かう姿勢こそが人を高めるのだと主張する。つまり、たとえ目に見える結果が伴わなくとも、絶えず向上を志す人間の魂はすでに高貴な領域に達しているというのである。

この名言は、ソローの超越主義的な価値観と一致する。彼は、人間は自然と精神の中に真理を見出すべきであり、社会的地位や物質的成功にとらわれるべきではないと考えた。ここで言う「aspire（志す）」とは、現状に満足せず、より真実で善い生き方を求めて思索し行動する精神の営みを指す。そしてそれ自体がすでに「elevated（高められている）」状態であるという逆説的な真理を説いている。

現代においてもこの言葉は、結果主義や成功偏重の風潮に対する静かな反論として深く響く。たとえば、夢や理想に向かって努力しているが成果が出ていないと感じている人にとって、その努力の姿勢こそがすでに人間性を高めているという自信と慰めを与える。ソローのこの一言は、志そのものに価値を見出す哲学的なまなざしを、私たちに静かに呼び覚ます名言である。

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