「いない人々は理想化され、目の前にいる人々はありふれて見える」

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1749年8月28日~1832年3月22日
  • ドイツ出身
  • 詩人、劇作家、小説家、哲学者、政治家

英文

“The people who are absent are the ideal; those who are present seem to be quite commonplace.”

日本語訳

「いない人々は理想化され、目の前にいる人々はありふれて見える」

解説

この名言は、人間の心理に潜む「理想化」と「現実軽視」の傾向を鋭く描き出している。ゲーテは、人は不在の人間や過去の人物、遠くの存在に対しては理想や幻想を重ねやすいが、目の前にいる人々については、その現実的な側面ばかりを見てしまい、軽んじる傾向があることを見抜いている。これは、距離によって生まれる「美化の錯覚」という人間共通の感情を巧みに表現した言葉である。

この心理は、日常生活だけでなく、歴史や芸術の評価、人間関係にも広く当てはまる。過去の偉人は美徳の象徴として語られやすく、遠くの文化や他人の人生は輝いて見える。一方で、日常の中で共に生きている人々は、あまりにも身近であるがゆえに、その価値を見失いやすい。ゲーテのこの名言は、私たちが実在の人間に向ける視線の偏りと、理想に対する過剰な投影を問いかけている。

現代でもこの現象は顕著で、SNSなどで可視化される「他者の理想化された姿」が、自分の現実や身近な存在を色あせさせる原因にもなっている。この名言は、真の理解と尊重は、今ここに共にいる人々に向けるべきであり、幻想に逃げることなく現実の価値を再発見すべきだという、深い倫理的示唆を含んでいる。理想は遠くにあるのではなく、目の前の現実の中にこそ見出すべきであるというゲーテの人間理解が、この言葉には込められている。

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