「私は自分自身を知らない。そして、どうか神よ、私が自分を知ることがありませんように」

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1749年8月28日~1832年3月22日
  • ドイツ出身
  • 詩人、劇作家、小説家、哲学者、政治家

英文

“I do not know myself, and God forbid that I should.”

日本語訳

「私は自分自身を知らない。そして、どうか神よ、私が自分を知ることがありませんように」

解説

この名言は、自己認識の限界と、それに伴う畏怖や不安を逆説的に表現したものである。一見して「無知の宣言」にも思えるが、実際には、自分を深く知ることがいかに困難で、時に恐ろしいことであるかを認識した者の内省的な言葉である。人間の内面には、欲望や弱さ、矛盾が潜んでおり、それらを直視することは安易な自己理解では済まされない危険な旅でもある

ゲーテは、人間の複雑さや深層心理への洞察に優れた作家であり、単純な自己肯定や合理的な自己理解に疑問を投げかける視点を持っていた。『ファウスト』における主人公も、自己探求の果てに破滅と救済のはざまで揺れ動く存在として描かれており、この名言もまた、人間存在の根源的な謎と恐れに触れている。ゲーテにとって、「自己を知る」という行為は、祝福であると同時に危険でもあった

現代でも、自己啓発や心理学の進展により、「自分を知ること」の価値が強調されているが、それは常に歓迎すべきことではなく、ときに苦しみや自己否定を伴う。この名言は、完全な自己理解などという幻想に対する慎重な姿勢を促し、ゲーテの深い人間理解と謙虚な精神を映し出している。彼は、人間の内面には、知るに値するものと、知らぬままでいたほうがよいものが共に存在すると語っているのである。

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