「財産は明らかに私有である方がよいが、その使用は共同である方が望ましい。そして、立法者の特別な役割は、人々の中にこのような善意ある性向を育てることである」

- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者
英文
“It is clearly better that property should be private, but the use of it common; and the special business of the legislator is to create in men this benevolent disposition.”
日本語訳
「財産は明らかに私有である方がよいが、その使用は共同である方が望ましい。そして、立法者の特別な役割は、人々の中にこのような善意ある性向を育てることである」
解説
この名言はアリストテレスの『政治学』において、私有財産と公共精神の調和というテーマを論じた重要な一節である。彼は、プラトンの提唱した完全な共有制(家族や財産の共有)に批判的であり、私有財産を認めることによってこそ責任感・節度・勤勉さが育まれると考えた。しかしその一方で、財の使用においては公共の精神が必要であるとし、個人の所有権と社会的連帯の両立を説いた。
ここでアリストテレスが重視するのは、単なる制度的枠組みではなく、市民の内面的な性向(エートス)である。すなわち、立法者の役割は法を制定するだけでなく、徳や利他心を育て、個人の利益を社会全体の善に結びつける性格形成を促すことにある。このように、法律は外的な統制だけでなく、内面的な倫理的教育の手段でもあるとする彼の見解がここに表れている。
現代においても、経済的自由と社会的公正のバランスは重要な課題であり、私的所有の原則を守りつつ、公共のために活用される道をいかに制度化し、文化として育てるかは多くの国や地域で問われている。アリストテレスのこの名言は、真の政治とは市民の心を育て、共通善への志向を制度と倫理の両面から支えるものであるという哲学的指針を明快に示している。
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