「ある種の動物は地中に巣を作るが、そうでないものもいる。フクロウやコウモリのように夜行性のものもいれば、昼間に活動するものもいる。動物には、飼いならされたものと野生のものがある。人間とラバは常に飼いならされた存在であり、ヒョウやオオカミは常に野生である。象のように容易に飼いならされるものもいる」

- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者
英文
“Some kinds of animals burrow in the ground; others do not. Some animals are nocturnal, as the owl and the bat; others use the hours of daylight. There are tame animals and wild animals. Man and the mule are always tame; the leopard and the wolf are invariably wild, and others, as the elephant, are easily tamed.”
日本語訳
「ある種の動物は地中に巣を作るが、そうでないものもいる。フクロウやコウモリのように夜行性のものもいれば、昼間に活動するものもいる。動物には、飼いならされたものと野生のものがある。人間とラバは常に飼いならされた存在であり、ヒョウやオオカミは常に野生である。象のように容易に飼いならされるものもいる」
解説
この言葉は、アリストテレスが『動物誌(Historia Animalium)』において展開した動物の行動と性質に関する分類的観察の一部である。彼は動物を体系的に分類し、生態、行動、性質、可馴性などを観察と経験に基づいて記述した。ここでは、活動時間・生息場所・性質(野生か飼育か)といった複数の観点から、動物たちの多様性が簡潔に整理されている。
アリストテレスは、人間もまた「常に飼いならされた存在(tame)」と分類しており、これは彼の人間観――人は社会的で共同生活を営む本性を持つ動物(ポリス的動物)である――と一致している。また、象のように「容易に飼いならされる」動物は人間との関係性の中で倫理的・政治的議論の素材ともなり得ると彼は考えていた。こうした観察は、自然の秩序や生物間の相違を通じて人間の本質を理解しようとする試みであった。
今日では、動物分類や行動生態学の観点から見るとその一部は経験則に依存しすぎているものの、自然界に対する細やかな観察と分類意識、そして人間を自然の中に位置づける姿勢は高く評価されている。この名言は、多様な生のあり方を理解することが、人間理解の基盤にもなるというアリストテレスの博物学的精神を今に伝えている。
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