「習慣は第二の天性であり、第一の天性を破壊する。しかし、そもそも天性とは何か?なぜ習慣は自然ではないと言えるのか?私は、天性そのものが第一の習慣にすぎず、習慣が第二の天性であるのと同様であることを、ひどく恐れている」

- 1623年6月19日~1662年8月19日
- フランス出身
- 哲学者、数学者、物理学者、キリスト教神学者
英文
“Habit is a second nature that destroys the first. But what is nature? Why is habit not natural? I am very much afraid that nature itself is only a first habit, just as habit is a second nature.”
日本語訳
「習慣は第二の天性であり、第一の天性を破壊する。しかし、そもそも天性とは何か?なぜ習慣は自然ではないと言えるのか?私は、天性そのものが第一の習慣にすぎず、習慣が第二の天性であるのと同様であることを、ひどく恐れている」
解説
この言葉は、パスカルが人間の本性と習慣の関係について深い懐疑を抱いていたことを鋭く示している。彼は、人間が「自然なもの」として信じている性質や行動様式さえも、実は長年にわたって繰り返されることで身についた習慣にすぎないのではないかと問い直す。つまり、「天性(nature)」と「習慣(habit)」の区別そのものが曖昧であり、本来の自分とは何かという根源的な問いさえ揺らいでくるのである。
この思想は、彼の倫理観や宗教観と密接に結びついている。パスカルは、人間が自分自身や世界の理解において、思考停止的に「当然」や「本性」と受け入れているものが、実際には慣れによって作られたものにすぎないことに注意を促した。したがって、人間の自己認識や道徳判断には常に疑いと検証の精神が必要であるという、哲学的姿勢がこの名言には込められている。
現代においても、文化的規範や個人の信念、価値観の多くが「習慣化された自然」として内面化されていることが指摘される。この名言は、私たちが無意識に「自分らしさ」や「正しさ」と信じているものさえも、再検討の対象であるという知的謙虚さを促す。パスカルはここで、人間の思考と行動の深層に潜む習慣の力と、それが本性すらも形成しているという根源的な不安と真理を詩的かつ哲学的に語っている。
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