「話すのは上手だが、書くのは下手な人がいる。それは、場所と聴衆の熱気が彼らを奮い立たせ、その熱によって自分でも思いもよらなかったものが引き出されるからである」
- 1623年6月19日～1662年8月19日
- フランス出身
- 哲学者、数学者、物理学者、キリスト教神学者
英文
“There are some who speak well and write badly. For the place and the audience warm them, and draw from their minds more than they think of without that warmth.”
日本語訳
「話すのは上手だが、書くのは下手な人がいる。それは、場所と聴衆の熱気が彼らを奮い立たせ、その熱によって自分でも思いもよらなかったものが引き出されるからである」
解説
この言葉は、話すことと書くことの本質的な違い、そして人間の表現力が環境や対話によって大きく左右されることを洞察したものである。パスカルは、一部の人が文章では力を発揮できなくとも、聴衆の存在や場の空気に触発されて、口頭では豊かな思考を引き出せると見抜いている。これは、言葉が単なる論理的道具ではなく、感情や雰囲気の影響を受ける生きた表現であることを示している。
この発言には、彼の人間理解の繊細さと心理的リアリズムが表れている。パスカルは、人の能力や知性が静的で固定されたものではなく、状況や刺激によって大きく変動することを重視していた。聴衆とのやり取りや共鳴が、書き言葉では現れにくい創造性や即興性を引き出すという点を、この名言は的確に捉えている。
現代においても、プレゼンテーションや対話の場で魅力的に語る人が、文章では精彩を欠くということは珍しくない。この名言は、表現とは環境と関係性によって活性化される動的な営みであり、才能や知性は常に文体や形式に均等に現れるわけではないという重要な真理を教えてくれる。パスカルはここで、人間の思考と表現の複雑な相互作用を鋭く言い当てている。
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