「すべての治療的な回復、そしてなおさらのこと、患者に真実を示そうとする不器用な試みは、彼を責任からの自由というゆりかごから引き離すものであり、したがって最も激しい抵抗に直面することを覚悟しなければならない」

- 1870年2月7日~1937年5月28日
- オーストリア出身
- 精神科医、心理学者
英文
“Every therapeutic cure, and still more, any awkward attempt to show the patient the truth, tears him from the cradle of his freedom from responsibility and must therefore reckon with the most vehement resistance.”
日本語訳
「すべての治療的な回復、そしてなおさらのこと、患者に真実を示そうとする不器用な試みは、彼を責任からの自由というゆりかごから引き離すものであり、したがって最も激しい抵抗に直面することを覚悟しなければならない」
解説
この言葉は、アドラーが提示した責任と抵抗の心理力学を明快に表している。人は、自らの症状や問題行動の背後にある動機や目的を見抜かれ、「自分にも選択と変化の責任がある」ことに直面すると、強い抵抗を示す。それは、問題の原因を外的要因に帰していた立場が崩れ、自分自身の内面に光が当たることへの恐れや防衛反応である。
特に治療者が未熟であったり、不適切なタイミングで真実を突きつけてしまうと、患者はそれを攻撃や非難と捉え、心理的な防衛を強化してしまう。このときの抵抗は、単なる頑固さではなく、自己イメージの崩壊や自由と責任を受け入れる痛みへの本能的な反応である。アドラーはここで、治療が倫理的な覚醒と自己責任の受容を伴う過程であることを明確にしている。
現代の心理療法においても、患者が自らの課題に主体的に向き合うには、内面の変化に伴う不安や抵抗を慎重に扱う必要がある。この名言は、真実の提示とは力を伴う行為であり、それに見合う信頼関係と共感が前提でなければならないという臨床上の深い知恵を示しているのである。
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