「自分が地主の息子だと言うのはあまり聞こえがよくない。だからむしろ、搾取されていたガリシアの農民の孫だと言っておこう」

- 1926年8月13日~2016年11月25日
- キューバ出身
- 革命家、政治家、弁護士
英文
“It doesn’t sound too good to say I am the son of a landowner, so let us rather say I am the grandson of exploited Galician peasants.”
日本語訳
「自分が地主の息子だと言うのはあまり聞こえがよくない。だからむしろ、搾取されていたガリシアの農民の孫だと言っておこう」
解説
この言葉は、フィデル・カストロが自らの出自に対して抱いていた複雑な意識と、階級的立場の再定義の試みを表している。カストロは実際には裕福なスペイン移民地主の息子として生まれたが、革命指導者としての正統性を強調するために、自らのルーツを労働者階級に接続し直そうとするユーモア混じりの自己描写を行っている。ここには、生まれではなく、立場と選択によって自分を定義するという革命家のアイデンティティ形成が見て取れる。
「地主の息子」は、革命の敵ともなる特権階級に属する印象を与える一方、「搾取された農民の孫」という表現は、民衆の苦しみを理解し共に歩む立場を強調する語りである。このような言い回しは、聴衆に対して親近感を与えると同時に、支配構造への批判を自らの血統にまで向けた自己否定的ユーモアとも言える。カストロはこうして、自らの出自を政治的に再解釈し、革命の語りに組み込む技術に長けていた。
現代においてもこの言葉は、指導者が自らの社会的位置づけをいかに語るか、またそれが政治的正当性や共感の形成にどう関わるかという問いに通じる。カストロのこの発言は、階級の問題を単に生まれの問題ではなく、意識と行動の問題として捉え直す姿勢を示しており、政治的アイデンティティの柔軟性と演出の力を如実に物語っている。
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