「時には、一日中、自分の背丈ほどもある重い鉄の棒で沸騰した物質を混ぜ続けなければならないこともありました。その日の終わりには疲労困憊していました。反対に別の日には、ラジウムを濃縮するために、極めて細かく繊細な分別結晶を行う作業に取り組んでいました」

マリ・キュリーの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年11月7日~1934年7月4日
  • ポーランド出身(後にフランスで活動)
  • 物理学者、化学者、教育者

英文

“Sometimes I had to spend a whole day mixing a boiling mass with a heavy iron rod nearly as large as myself. I would be broken with fatigue at the day’s end. Other days, on the contrary, the work would be a most minute and delicate fractional crystallization, in the effort to concentrate the radium.”

日本語訳

「時には、一日中、自分の背丈ほどもある重い鉄の棒で沸騰した物質を混ぜ続けなければならないこともありました。その日の終わりには疲労困憊していました。反対に別の日には、ラジウムを濃縮するために、極めて細かく繊細な分別結晶を行う作業に取り組んでいました」

解説

この言葉は、マリー・キュリーが放射性元素ラジウムの分離に費やした肉体的・精神的な労苦の一端を描写したものである。重労働と精密作業という相反する性質を併せ持つ科学研究の現実を、彼女は静かに、しかし強い実感を込めて語っている。巨大な鉄棒を操る重作業と、分別結晶という繊細な操作を一人で担う姿は、科学者である前に鍛錬された職人でもあった彼女の姿を浮かび上がらせる。

特に、ラジウムは非常に微量であり、何トンもの鉱石からわずか数ミリグラムを取り出すために、果てしない工程を要した。彼女の研究は、単なる知的探究にとどまらず、極めて過酷な肉体労働を伴う実地の挑戦でもあった。このような作業を女性一人で成し遂げたという事実は、当時の性別に対する社会的制約を打ち破る力強い証拠ともなる。

この一文は、偉大な科学的成果が生まれる背景には、地道な努力と不断の献身があることを示す貴重な証言である。現代の科学技術が高度化・自動化する一方で、人の手と根気に支えられた原点を忘れないようにという警鐘でもある。マリー・キュリーのこの言葉は、知識だけでなく労働の尊厳にも目を向ける科学の姿勢を静かに教えている。

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