「私は生まれつきの“母親”ではなかったと思います……もし誰かを母のように世話したいと思ったことがあるとすれば、それは父でした」

- 1884年10月11日~1962年11月7日
- アメリカ合衆国出身
- 大統領夫人(ファーストレディ)、人権活動家、外交官、作家
英文
“I do not think that I am a natural born mother… If I ever wanted to mother anyone, it was my father.”
日本語訳
「私は生まれつきの“母親”ではなかったと思います……もし誰かを母のように世話したいと思ったことがあるとすれば、それは父でした」
解説
この名言は、母性というものが本能ではなく、個々の人生経験や感情の中で育まれるものであることを、率直かつ繊細に語っている。エレノア・ルーズベルトはここで、「女性だから当然のように母性を持つ」という固定観念に異を唱え、自身が母親としての役割に本質的に適していたとは感じていなかったという個人的な葛藤を明かしている。そして、母のように深い愛情や庇護の感情を向けた対象が、幼い頃に喪った父であったことは、彼女の内面にある複雑な愛情の構造と、家庭環境が人格形成に与えた影響の深さを示している。
エレノア・ルーズベルトは、母や父を早くに亡くし、感情のよりどころを失った少女時代を送った。そのため、彼女の中で母性とは与えられるものであると同時に、自分自身の中で再構築する対象でもあった。この名言には、彼女が母として完璧であろうとするよりも、人としてどう他者と向き合うかに重きを置いていた姿勢がにじんでいる。
現代においても、「母性」のあり方には多くの期待や圧力が存在する。この言葉は、母親であることもまた一つの選択であり、誰もが同じ形で愛を表現するわけではないということを認める重要な視点を提供してくれる。母性とは定型ではなく、人間関係や心の在り方の中で育まれる流動的な感情である——この名言は、その複雑さと真実を、静かに、しかし誠実に語っている。
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