「もろもろの記憶のなかでは、時を経るにつれて、夢と現実とは等価のものになっていく」

- 1925年1月14日~1970年11月25日
- 日本出身
- 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
- 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。
原文
「もろもろの記憶のなかでは、時を経るにつれて、夢と現実とは等価のものになっていく」
解説
この言葉は、三島由紀夫が記憶の本質と時間の作用について鋭く洞察したものである。人間の記憶においては、時間の経過とともに夢で見たことも現実に体験したことも区別が曖昧になり、等しく重みを持つものとなるという認識が示されている。ここでは、時間による記憶の変容と、現実と幻影の境界が次第に溶け合う人間の精神構造が語られている。
三島は、現実とは常に変化し消えゆくものであり、記憶のなかでしか持続できないことを深く理解していた。だからこそ、記憶の世界では、現実も夢も等しく「過ぎ去ったもの」として並び立ち、もはや区別されないのである。この言葉は、三島が持っていた時間と記憶に対する繊細な感受性と、現実を絶対視しない柔軟な精神態度を象徴している。
現代においても、この考え方は非常に示唆に富む。たとえば、過去を振り返るとき、実際に起きた出来事と夢想や想像の記憶が混じり合い、どちらも心に鮮やかに残ることがある。時間が経つにつれ、現実と夢の境界は曖昧になり、どちらも同じように私たちの存在を形づくるものとなるのだ。
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