「能は、いつも劇の終ったところからはじまる」

三島由紀夫の名言(画像はイメージです)
三島由紀夫の名言(画像はイメージです)
  • 1925年1月14日~1970年11月25日
  • 日本出身
  • 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
  • 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。

原文

「能は、いつも劇の終ったところからはじまる」

解説

この言葉は、三島由紀夫が能という芸術形式の特異な構造と精神性について鋭く洞察したものである。能は一般的な演劇のように物語の起承転結を描くのではなく、既に終わった出来事、過ぎ去った過去を背景にして進行し、そこから新たな情感や幽玄の世界を立ち上げるという認識が示されている。ここでは、生きた時間ではなく、記憶や魂の残響を描く能独特の時間意識が語られている。

三島は、能においては劇的なクライマックスや盛り上がりは既に過去のものであり、舞台に立つのはその後の余韻や残響だけだと捉えていた。この独特の様式は、出来事そのものではなく、その精神的な反響や余韻を深く味わうことを観客に要求するのである。この言葉は、三島が持っていた日本的美意識、特に「終わり」の美しさと「余白」の重視を象徴している。

現代においても、この洞察は響きを持つ。たとえば、過去の体験や失われたものへの深い反省や追憶は、新たな創造や生き方を導く力となることがある。終わりを起点とし、余韻とともに生を見つめ直すことこそが、最も深い芸術であり、最も深い生の在り方なのだ

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