「あらゆる芸術ジャンルは、近代後期、すなわち浪漫主義のあとでは、お互いに気まずくなり、別居し、離婚した」

- 1925年1月14日~1970年11月25日
- 日本出身
- 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
- 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。
原文
「あらゆる芸術ジャンルは、近代後期、すなわち浪漫主義のあとでは、お互いに気まずくなり、別居し、離婚した」
解説
この言葉は、三島由紀夫が近代以降の芸術の分断と孤立を鋭く表現したものである。かつては一体感を持っていた芸術の諸ジャンル――文学、絵画、音楽、演劇など――が、近代後期、特に浪漫主義以降に互いに距離を置き、共通の精神を失ったという現象を指摘している。ここでは、芸術が統一的な世界観を失い、個別に孤立していった過程が鮮やかに描かれている。
この考え方の背景には、三島の文化に対する深い憂慮と審美的な一貫性への希求がある。彼は、戦後社会における芸術の多様化や専門化が、むしろ精神的な一貫性や総合性を損ない、芸術を断片化させたと考えた。浪漫主義の情熱が終焉を迎えた後、芸術はそれぞれ自立しながらも、互いに無関心となり、孤独に生きる道を選んだのである。この言葉は、三島の総合芸術への憧れと、失われた精神的統一への哀惜をよく表している。
現代においても、この洞察は響く力を持つ。芸術ジャンルの細分化と専門化が進む現代では、異なる表現領域が互いに交流する機会は限られ、断絶が深まる傾向がある。三島のこの指摘は、芸術においても異なるジャンル間の対話や総合的な精神性を回復することの重要性をあらためて問いかけるものであり、文化の再生を志す上で重い示唆を与えている。
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