「人がなりうるものには、ならなければならない。この欲求を私たちは自己実現と呼ぶ」
- 1908年4月1日～1970年6月8日
- アメリカ合衆国出身
- 心理学者、教育者、理論家
- 人間性心理学の創始者の一人として知られ、「欲求階層説」や「自己実現」の概念を提唱。人間の成長や潜在能力に焦点を当てた理論は、心理学のみならず教育・ビジネス分野にも大きな影響を与えた。20世紀の心理学思想における中心的人物である。
英文
“What a man can be, he must be. This need we call self-actualization.”
日本語訳
「人がなりうるものには、ならなければならない。この欲求を私たちは自己実現と呼ぶ」
解説
この言葉は、マズローの欲求階層説における頂点概念である「自己実現」を定義する決定的な表現である。彼は人間の基本的な欲求が段階的に発展すると考え、生理的欲求や安全の欲求、所属や承認の欲求を満たしたその先に、人は自らの潜在能力を最大限に発揮したいという根源的な欲求を持つとした。それが「自己実現欲求」である。
ここで重要なのは、「can be（なりうる）」という可能性の概念と、「must be（ならねばならない）」という内発的な必然性が結びついている点である。すなわち、人は自らの資質や才能を知ったとき、それを形にしない限り心理的に満たされることはない。この「ならねばならない」という衝動は、外的な圧力ではなく、内側から湧き上がる存在の要請である。
現代においても、この概念は自己啓発、教育、キャリア開発、精神的成長の分野において中心的な役割を果たしている。たとえば芸術家が創作せずにはいられないように、科学者が探究をやめられないように、人はその本質に従って生きるとき、最も深い意味で充足される。この言葉は、人間が自己の可能性を現実化することこそが、最も高次の生き方であるというマズロー心理学の核心を語っている。
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