「旅先で私が最も好む儀式はミサを聴くことだ。教会だけが、誰かが私に語りかけても、私が返答しなくてよい場所なのだ」

- 1890年11月22日~1970年11月9日
- フランス出身
- 軍人、政治家、第18代フランス大統領
- 第二次世界大戦中に自由フランスを主導し、戦後はフランス第五共和政を樹立。大統領として強力な指導力を発揮し、植民地政策の転換や独自の外交路線を推進した。近代フランスの象徴的指導者として知られている。
英文
“Hearing Mass is the ceremony I most favor during my travels. Church is the only place where someone speaks to me and I do not have to answer back.”
日本語訳
「旅先で私が最も好む儀式はミサを聴くことだ。教会だけが、誰かが私に語りかけても、私が返答しなくてよい場所なのだ」
解説
この名言は、絶えず人々の視線と期待にさらされ、応答を求められる国家指導者としての孤独と重圧を、静かに吐露したものである。シャルル・ド・ゴールのようなリーダーにとって、常に判断を求められ、決断に責任を持たなければならない立場とは、言葉を発することが義務であり、沈黙すら許されない職務である。その彼が、教会でのミサの時間を「返答しなくてよい」として最も好むというこの言葉には、沈黙と受容の時間がもたらす救いがにじんでいる。
ド・ゴールはカトリック信仰に基づく伝統を尊重していたが、それは政治的な信仰というよりも、精神の支柱としての宗教的秩序や内面の静けさを重んじる姿勢に近かった。教会は、国家のために語り続けた彼にとって唯一の「応答を求められない」空間であり、存在そのものを休めることのできる場所だった。この名言は、リーダーとしての公的役割と、個人としての安らぎを求める心の交差点を見事に映し出している。
現代においてもこの言葉は、多忙と責任に追われる人々に共鳴する。「答えなければならない社会」から一時離れ、ただ「聴く」ことだけが許される空間と時間の価値は、ますます貴重なものとなっている。この名言は、沈黙の中にある慰めと、対話から解放される安堵を示す、静かで深い人間の真理を語っている。
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