「この至高の瞬間において、描写する力は我が能力を超えていた」

- 1265年頃~1321年9月14日
- イタリア(フィレンツェ共和国)出身
- 詩人、哲学者、政治家
- 叙事詩『神曲』の作者として知られ、中世ヨーロッパ文学の頂点を築いた。トスカーナ語(イタリア語)の発展にも寄与し、「イタリア語の父」とも称される。現世・煉獄・天国を旅する壮大な構想を通じて、宗教・倫理・政治の問題を詩的に表現した。
英文
“At this high moment, ability failed my capacity to describe.”
日本語訳
「この至高の瞬間において、描写する力は我が能力を超えていた」
解説
この言葉は、『神曲』の最終篇である天国篇(Paradiso)第33歌において、ダンテが神の真の姿を目の当たりにした瞬間の描写に登場する。宇宙の究極的真理と神の愛を前にした彼は、もはや人間の言語や知性では表現しきれないと告白する。この表現は、人間の理性の限界と、神聖なるものの超越性を象徴している。
この場面は、ダンテの詩作における頂点であり終点でもある。旅を通して彼は地獄から煉獄を経て、天界に至ったが、最後の真理の前では詩人としての言葉さえ無力であることを自覚する。それは、宗教的な神秘の核心には言語が及ばぬ領域があるという中世キリスト教神学の思想とも深く結びついている。
現代においても、極度の感動や精神的体験、芸術や自然の崇高さに触れたとき、人はしばしば言葉を失う。この言葉はそのような瞬間の普遍的な体験を表しており、人間の表現力が尽きるほどの高みにこそ、真の価値や神聖が存在するという認識を我々に思い起こさせる。
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