「正規の裁判所の命令に従わせるために、どこであれ軍隊を出動させなければならないこと、あるいは出動させること自体を、私は嘆かわしく思う」

ドワイト・D・アイゼンハワーの名言
ドワイト・D・アイゼンハワーの名言
  • アメリカ合衆国出身
  • 軍人、政治家、第34代アメリカ合衆国大統領
  • 第二次世界大戦中に連合国軍の最高司令官としてヨーロッパ戦線を指揮し、ノルマンディー上陸作戦を成功に導いた。大統領としては冷戦下の安定と経済成長を推進し、州間高速道路網の建設や公民権運動初期への対応でも知られている。

英文

“I deplore the need or the use of troops anywhere to get American citizens to obey the orders of constituted courts.”

日本語訳

「正規の裁判所の命令に従わせるために、どこであれ軍隊を出動させなければならないこと、あるいは出動させること自体を、私は嘆かわしく思う」

解説

この名言は、法の支配に対する市民の自主的な服従が本来あるべき姿であり、それを実現させるために軍隊という強制力を用いねばならない現実の悲しさを表したものである。アイゼンハワーは1957年、アーカンソー州リトルロックにおいて、人種隔離に反対する連邦裁判所の命令を実行させるために空挺部隊を派遣するという異例の決断を下した。その背景には、州知事や地元民が裁判所命令に反抗し、黒人学生の登校を妨害するという深刻な法秩序の危機があった。

アイゼンハワーはこの状況に際し、合衆国大統領として法の執行を守る義務と、軍の介入が持つ象徴的・歴史的な重みの板挟みに立たされた。この言葉には、法に従うべき市民が、権力によって無理やり従わせられる状況に対する倫理的な葛藤と痛みが込められている。軍事力によって法が遂行されるならば、それは自由国家としての根幹を揺るがすものであるという深い自覚が読み取れる。

この名言は、市民社会において法の正統性が尊重されなければ、自由も平等も空虚な理念に堕してしまうという厳粛な警告である。現代においても、司法命令の実行を妨げる政治的圧力や、法の軽視が見られる中で、「法は力によって守られるものではなく、敬意によって支えられるべきだ」という民主主義の根本原則を、この言葉は静かに、しかし明確に訴えている。

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