「政府の中枢においては、軍産複合体によって求められたか否かを問わず、正当でない影響力が蓄積されることに警戒せねばならない。誤った権力が破滅的に拡大する可能性は存在し、今後も続くだろう」

- アメリカ合衆国出身
- 軍人、政治家、第34代アメリカ合衆国大統領
- 第二次世界大戦中に連合国軍の最高司令官としてヨーロッパ戦線を指揮し、ノルマンディー上陸作戦を成功に導いた。大統領としては冷戦下の安定と経済成長を推進し、州間高速道路網の建設や公民権運動初期への対応でも知られている。
英文
“In the councils of government, we must guard against the acquisition of unwarranted influence, whether sought or unsought, by the military-industrial complex. The potential for the disastrous rise of misplaced power exists and will persist.”
日本語訳
「政府の中枢においては、軍産複合体によって求められたか否かを問わず、正当でない影響力が蓄積されることに警戒せねばならない。誤った権力が破滅的に拡大する可能性は存在し、今後も続くだろう」
解説
この名言は、アイゼンハワーが1961年1月17日の大統領退任演説で発した警告の中でも最も有名な一節であり、アメリカの民主主義を守るために政治と軍事産業の癒着を厳しく監視すべきであるという歴史的メッセージである。彼は軍人として国家に仕えた経験から、防衛に必要な産業と政府の協力体制が、やがて独立した巨大な権力装置となり、国民の統制を離れて暴走する危険性を強く懸念していた。
ここで述べられる「military-industrial complex(軍産複合体)」とは、軍隊、兵器産業、政治家の三者が相互に利権を結び、国家の意思決定に不当な影響を与える構造を指す。アイゼンハワーは、それが「求められたものであれ、そうでないものであれ」影響力をもつこと自体が危険であると明言し、民主的プロセスが知らぬ間に蝕まれる可能性を国民に警告したのである。この警鐘は、単なる現象の説明ではなく、制度の自浄能力と市民の覚醒を促す訴えでもある。
現代においても、国防費の拡大や安全保障の名の下で進む監視社会、政治と産業の癒着といった問題は、アイゼンハワーの予見を裏付ける形で進行している。この名言は、民主主義の敵が常に外にあるとは限らず、内なる制度の構造や惰性の中に潜むことを示す。自由と正義を守るためには、国民一人ひとりが「見えにくい権力の蓄積」に目を光らせ、政治に対する健全な懐疑心を保ち続ける必要があるという、不朽の警告である。
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